家にある大量の紙の本を電子書籍化した話
いわゆる "自炊代行" というのを依頼してみた話です。
エンジニアたるもの、ということで、我が家も大量の紙の書籍 (といっても少ないほうだと思うんだけど...) があり、奥方からの 見てないなら、捨てろ 圧力がひどく、電子書籍化してみることにしました。 (新居での念願の個室書斎も叶わなかったし...)
法律の話
法律的にグレーだと見る向きもある。
過去に裁判が起こされ、最高裁まで争われた結果、作家による許諾がない場合の自炊代行は著作権侵害であるとの旨の高裁判決が 2016 年に確定。 この国と、立法・司法の、非常に残念かつ極めて時代遅れなところが垣間見える判決だ。
あくまで一つの判例であり、全てのケースで違法と確定するわけではないが、違法の恐れのある行為という認識で間違っていない。 ただ、個人利用目的の自炊代行の行為については、現在も親告罪であると考えられることから、作家側から訴えられない限りは、罪に問われることはないため、自炊代行業者というのは引き続き存続している。
自炊代行業者側も、自衛のため、本の著者が自炊代行を明示的に認めていない (例の裁判を起こした人たち含む) 場合、その本の依頼は受けないらしい。
以下、私見ですが、 ---
もちろん、電子化されて、転売や無料配布でもされた日には、作家の収入はだだ下がりで、それを怖れる気持ちは当然わかる。
でも、だからといって、電子化という、高価な機械がなければ、効率的にできない作業を、自分たちでやらなければならないのは意味が分からないよね。 紙の本を利用者側に強要して、不便を求めるのもちょっと意味がわからない。 (紙の本を否定するわけじゃない。それは利用者側が使い分ければいいということ)
取り締まるべきは、個人利用として電子化したものを勝手に外にばらまくやつであって、個人利用のために自炊代行を利用する個人ではないよね。
幸い、ソフトウェア関連の技術本の著者に関しては、少なくとも僕が依頼した本の著者は、自炊代行を明示的に認めない作家リストには誰も載ってませんでした。 まぁでも僕がいくらここで主張しても、法的な責任は取れないので、各自の判断でご利用ください。
References
- 自炊代行は違法?著作権法上OKの場合とは | TRENDERSNET
- 書籍スキャンの代行依頼は違法なの?利用してみての個人的な感想! | ネットプレイな日々
- 著作権侵害差止等請求事件(「自炊代行」)
- 日本の著作権法における非親告罪化 - Wikipedia
- 著作権法の2つの改正法が施行目前!概要を知っておこう | 著作権のネタ帳
業者選定
ネットで検索してみると、いろんな業者が引き続きサービスを提供してくれていることが分かる。 そして、各社ともに、結構、サービス内容、料金体系、他、いろいろ違っていて面白かった。差別化戦略のお手本みたいな感じ。
主な違いとしては、以下の要素について、各社サービスプランを変えて提供している。
- 料金単価 (ページ数であったり、冊数であったり、本のサイズであったり、で料金が変わってくる、大量発注割引みたいなものもある)
- カラースキャン, 背表紙等スキャン, ファイル名変更, OCR, 各端末最適化などのオプション処理
- 納期 (大抵の場合、納期を短くしようとすると課金になる)
- 中には、本を傷つけずに返却するサービスを提供しているところもあった! (通常は、裁断してスキャンなので、紙の本は返ってこない)
これだけでも結構比較しがいがあるのだが、スキャンのクオリティなども大事なので、口コミなども踏まえて判断する必要がある。
こちら側の要求事項と価格感を踏まえた上で、以下の 3 社を比較し、最終的にスキャンピーさんに依頼してみることにした。
とはいえ、やはり裁断スキャンで書籍が返ってこないことを考えると、いきなり大事な本を依頼するのはちょっと怖い。。 まずは、割と大事じゃない系の本を 20 冊ほど依頼してみることにした。
References
- 自炊代行サービス業者おすすめ比較人気ランキング5選【2020年】 | ヒカキング
- 電子書籍化サービス(代行)9社比較!おすすめをまとめてみた! | ホームレスになった元トヨタ社員が年収1億円の23歳に出会って起業した結果・・・
- スキャン代行サービス11社比較! 価格・OCR・雑誌対応などまとめた一覧 | うたたね日和
結果と所感
予定納期 15 日だったところ、コロナの影響だろう、 10 日ばかし遅れて作業完了の通知。 支払いを終えて、確認が取れると、電子ファイルにアクセスできるようになる。
スキャンの品質は個人的には、十分すぎる感じでした。
納期が大きく遅れたのは、正直かなり不安になったのだけど、このコロナ下のご時世だけに仕方がない。
メールでの対応も非常に丁寧でした。 多少納期が遅れても、焦らずにのんびり待てばいいのではないでしょうか。低価格で電子化サービスを提供してくれるだけでもありがたい。
サービスを利用してみて思ったこと。 やっぱり人がやる作業なので、どうしてもスキャンでのミスや、紛失などが起こりうる可能性は考えておいた方がいいと思うので、
- 本当に大切な本の場合は、自分でやる or かなり高価格で信頼できるところに出す
- テストで何冊か大事度の低い書籍を依頼に出してみて、サービス品質を確認する
- その後も一度に全てまとめては依頼せず、ある程度小刻みに依頼する
- 依頼する前に、依頼に出す本のリストをメモしておく
- 納品時にちゃんとチェックする (すぐにレスすれば、原本が失われていない可能性もありうる)
などの対策は、一応行っておくことをおすすめします。 最悪、依頼に出した書類は、電子化もされず失われる可能性が、僅かながらあることを受け入れておく必要があるでしょう。 (泣き寝入りしろという意味ではないですが)